2025/12/03(水) up
なぜ今、店舗併用住宅が選ばれるのか ー 住まいと商いが一体になる新しい暮らし方

コロナ禍以降、働き方と暮らし方の境界が大きく変わった。リモートワーク、副業、個人事業、スモールビジネス。住まいの内側で生まれる「小さな商い」は、もはや一時的なブームではなく、新しい生活スタイルとして定着しつつある。そうした流れの中で、いま静かに注目を集めているのが「店舗併用住宅」だ。かつては飲食店や美容室、工務店の自宅兼事務所など、限られた事業者のための住まいというイメージが強かった。しかし最近では、焼き菓子工房、小さなショップ、サロン、アトリエ、教室など、等身大の商いを選ぶ人たちの選択肢として広がりを見せている。

店舗併用住宅が選ばれる一つ目の理由は、暮らしと商いが地続きになる心地よさだ。移動時間がなくなることで、生活のリズムに合わせた柔軟な働き方ができる。子育てや介護との両立がしやすく、「暮らしを中心にした事業設計」が可能になる。これは住宅と店舗を分けて借りる二拠点型の経営では得られないメリットだ。とくに小規模事業では固定費が重くのしかかるが、店舗併用住宅であれば家賃と地代が一本化され、資金リスクが下がる。「夢のサイズを自分に合わせて小さく始める」ことができるのは、今の時代に合った合理的な選択だと言える。


二つ目は、まちづくりの文脈での価値の高まりだ。SUMUSが提唱する「ローカルデベロッパー」のまちづくりにおいても、小さな商いは街の表情をつくる重要な要素だ。大型商業施設だけでは生み出せない“にぎわいの粒度”を生み出すのは、生活動線上の小さな店だ。店舗併用住宅はまちの中に商いを溶け込ませる装置であり、通りの雰囲気を少しずつ変える力を持つ。たとえば、住宅地の一角に週末だけ開くベーカリーや、夕方から灯りがともる小さなサロンがあれば、それは「暮らしの風景」をつくる。社会的にも、ローカルビジネスを育てることが地域経済の持続性につながるという認識が広がり、政策的な後押しも出始めている。

三つ目は、自分の生き方をデザインしたいという欲求の高まりだ。とくに30~40代では、「会社中心」ではなく、「暮らし中心」のキャリア設計を志向する人が増えた。店舗併用住宅は、人生の優先順位を自ら決めたい人にとって、暮らしと仕事の一体化を可能にする住まいである。朝は家族と食卓を囲み、昼は目の前の店舗でお客さまと向き合い、夜はリビングでくつろぐ。仕事と生活が混ざることを「曖昧さ」と捉えるのではなく、「人生の一体感」として楽しむマインドが広がっている。
また、店舗併用住宅は「自分だけの場所を持つ」ことと「地域とつながる」ことを同時に叶える。店を開けば、ご近所さんが常連になり、人と人をつなぐハブにもなる。孤立しがちな現代の暮らしの中で、小さな店はコミュニティづくりの起点になることも多い。小規模な商いが街を温め、街がまた商いを育てる。この循環は、まちづくりに向き合う工務店にとっても大きな意味を持つ。


もちろん、店舗併用住宅には向き・不向きがある。店舗部分の使い方によっては住宅ローンが使えなかったり、騒音対策が必要だったりと、一般住宅にはない制約がある。そのため、検討段階で「自分のライフスタイルに合うか」を丁寧に見極める必要がある。しかし、そのハードルを越えられる人にとって、店舗併用住宅は“暮らし方を自分で選び取る”という強い満足をもたらす。
いま、暮らしと仕事、地域が新しい形でつながり始めている。これからの時代を考えたとき、店舗併用住宅は単なる家ではなく、「自分らしい生き方」を支えるプラットフォームだと言えるだろう。